毎年『フィラリアのお薬』を飲まれていると思いますが、
なんとなく疑問もあったりしませんか?
フィラリア症の予防についてよくあるご質問を挙げてみました。
一緒に勉強してみましょう!
Q1:フィラリアってなに?
Q2:どんな症状が出るの?
Q3:どうやって治療するの?
Q4:予防法はあるの?
Q5:室内飼育なら予防なしで安全?
Q6:今まで予防なしだったけど平気?
Q7:夏だけ飲めば大丈夫?
Q8:毎年飲んでいたら検査はいらない?
Q9:『新しいフィラリア予防』ってなに?
これらの他にも、ご不明な点は遠慮なくお問い合わせください!
A.『フィラリア』とは、蚊に刺されて感染する寄生虫です。
フィラリアに感染している犬から蚊が吸血
蚊の体内にフィラリアの幼虫が入り込む
その蚊が、他の犬を吸血
蚊の体内にいたフィラリア幼虫が犬に感染
フィラリア幼虫が数ヵ月かけて移動し心臓へ
心臓内で成虫となり、多数の幼虫を産む
心臓で最大30cmまで成長する糸状の寄生虫です!
A.命に関わる危険な症状がいろいろ現れます
フィラリアが心臓で増殖することで様々な症状が起こります。
それを『フィラリア症』といい、以下のような症状が現れます。
重度の場合、死に至ることもあります。
心臓内のフィラリア成虫が増えて、弁の閉鎖を邪魔したりすると
『大静脈症候群(ベナケバシンドローム)』を起こします。
重度の脱力、血色素尿(赤いオシッコ)など症状が急激に現れ、
無治療の場合は2日ほどで命を落とします。
この場合は、緊急の外科的な治療が必要となります。
A.いろいろな方法がありますが…
フィラリア症の治療方法はいろいろありますが、
それぞれリスクを伴います。
①外科的な摘出術
頚部の血管から細い器具を入れて、
心臓内のフィラリア成虫を直接摘出します。
摘出時に死亡したフィラリアの欠片は、
生きているフィラリア以上に強い症状を起こす
ことが知られています。
『大静脈症候群』を起こし緊急の場合や、
大量のフィラリア成虫が寄生している場合以外に、
外科的に摘出することはまずありません。
②成虫駆虫薬
心臓内で増殖してしまったフィラリア成虫を駆除する薬剤です。
駆除された成虫は肺などに詰まり、問題となります。
手術と同様に、死亡したフィラリアやその欠片が
強い症状を起こす可能性があります。
③予防薬の長期投与
通常のフィラリア予防の薬を、通常と異なる飲み方で使用します。
数年かけて成虫が消えていきます。
成虫が少なく、フィラリア症の症状が出ていない場合の選択肢です。
この3種類の治療法の中では危険性の比較的低い治療法といえます。
フィラリア成虫の数や、ワンちゃんの状態で治療法を選びます。
心臓のエコー検査や、胸部のレントゲン検査の結果で判断します。
『治療する』=『感染し成虫となっている』状況です。
フィラリアを成虫にさせないよう予防していくことが重要です。
A.予防は簡単です!
予防方法
フィラリア症の予防は、1ヵ月に1回の内服をするだけです。
お肉タイプ、錠剤タイプ、皮膚に垂らすタイプがあります。
1年に1回のお注射で12か月持続する注射タイプもあります。
少しずつ効果が違うので、ワンちゃんに合ったお薬を選びましょう!
以前の6か月タイプよりも安全性が改善したことからや
『新しいフィラリア予防のお注射』を2015年から採用しました。
詳細は『新しいフィラリア予防』のページをご参照ください。
お薬のタイミング
フィラリア成虫によって起こる『フィラリア症』の予防のために、
体内に入ったフィラリア幼虫を駆除するお薬です。
お薬の効果が1ヵ月持続するわけではなく、
体内に入ってから、ある程度成長した幼虫に対してお薬が効くため、
1ヵ月ごとの投薬となります。
ですから、40日に1回などの自己流で投薬をしていると
お薬の効くタイミングを逃す危険性があります。
お薬を飲む期間
フィラリア症の専門学会であるAmerican Heartworm Societyでは、
年間を通した投与を推奨しています。
日本では未だに『蚊のいる時期のみ』の子が多いのが現状です。
そのために感染したワンちゃんがなかなか減らないのかもしれません。
蚊のいる時期のみ投与する場合は、
蚊がいなくなってから1ヵ月後の12月の投薬が重要です。
蚊によって感染する病気ですから、期間は地域によって異なります。
詳しくは、こちらをご参照ください!
または、上記の『新しいフィラリア予防』の注射の場合は、
12か月持続すため、投薬のタイミングを気にする必要はなくなります。
A.室内飼育でも予防が必要です!
フィラリアは蚊に刺されることで感染します。
蚊に刺されないように『蚊取り線香』や『虫除けスプレー』など
工夫されている方もいらっしゃると思います。
100%蚊に刺されないのであれば良いのですが、
私たちも室内で蚊に刺されることがあります。
フィラリア症は命に関わる疾患です。
確実な方法でしっかり予防してあげましょう!
A.とても危険です!
フィラリア症の予防が広まり20年近くになりますが、
2000年の調査でも予防の普及率は55%程度であり、
ワンちゃんの35%がフィラリアに感染しているという
データがあります。
東日本大震災で保護されたたくさんのワンちゃん達の
約半数がフィラリアに感染していたそうです。
2013年のデータでも、神奈川県の動物保護センターにいる
ワンちゃんの22.7%がフィラリア感染していたそうです。
ワンちゃん・ネコちゃんが増えるとともに、
予防が不十分な子たちが増え、
フィラリア症の危険にさらされています。
感染したフィラリア幼虫が成虫となり、
症状が現れるまで数年かかることもあります。
症状が出ると急激に進行し死に至ることもあります。
危険な病気ですが、簡単な検査と、簡単な予防で防げる病気です。
確実に予防してあげましょう!
あの『忠犬ハチ公』にも
大量のフィラリアが
寄生していました。
死因はフィラリア症だけでなく、
心臓と肺に悪性腫瘍もあったことが
2010年の検査で判明しましたね。
剥製となったハチ公くんは
現在、国立科学博物館にいます。
A.少なくとも12月まで飲みましょう!
フィラリア症の予防は『体内に入ったフィラリア幼虫の駆除』です。
つまり、蚊がいなくなってから最後のダメ押しが非常に重要です。
蚊の体内でフィラリア幼虫が感染力を持つ期間は、気温で推測します。
気温からHDU(Heartworm Development heat Unit)を計算します。
『体内に入って1ヵ月後の幼虫を駆除』するお薬ですから、
感染可能期間より1ヵ月遅れてお薬を飲む必要があります。
HDUを参考にすると神奈川県では最低でも5月末~12月中旬の
予防が必要です。
近年の温暖化の影響、断熱効果の高い住宅などの影響で、
冬でも蚊が見られることがあり、通年予防が理想ではあります。
当院では以下の理由から5~12月の予防薬投与をオススメしています。
①HDUの概念からいくと遅くても5月末からの投与が必要です
②HDUによる感染可能期間が年々延長しています
③フィラリア症の専門学会*では、通年投与を推奨しています
1ヵ月分の費用は当院で負担**いたしますので、
安全のために5~12月の投与を徹底しましょう。
もちろん、専門学会の推奨どおり通年投与が理想です!
*American Heartworm Society:AHS
各国の専門家によるフィラリア症の国際的な専門学会です。
英語ですが、フィラリア症のガイドラインをご覧になれます。
日本犬糸状虫症研究会もこの学会のガイドラインがベースです。
AHSのHPはこちら
**5~12月分の計8回分をご購入の方はまとめ割引として
1か月分が無料になります。
A.毎年の検査が必要です!
フィラリアのお薬を必要な期間にわたり確実に飲んでいれば、
確実に予防できているはずです。
しかし、『フィラリア予防をしている100頭のワンちゃんのうち、
適切にお薬が飲めていた子は41頭しかいなかった!』
という大規模な調査データが発表されています。
原因としては、以下のようなものが挙げられています。
・予防期間が不適切だった(最後の12月が特に重要です!)
・お薬を飲めていなかった(隠れて出していた?)
・お薬を飲ませる間隔が不適切だった…など
しっかりお薬を与えていても、ちゃんと予防できているのか、
お薬を飲む前に安全にお薬が飲めるか確認が必要です。
国際的な専門学会であるAmerican Heartworm Societyの
ガイドラインも『毎年検査をすること』と2010年に改定されました。
ほんの少しの血液ですぐに結果が出る抗原検査*です。
ワンちゃんの安全のために3~4月に検査を受けておきましょう!
※春はフィラリア検査や狂犬病予防接種で動物病院が混雑します。
混雑回避のために『新しいフィラリア予防』の注射も方法です。
『抗原検査』
フィラリア成虫がいるかを免疫反応を利用して検査します。
少量の血液で、数分のうちに検査が終わります。
『ミクロフィラリア検査』
顕微鏡で検査する方法では、20%程度しか検出できません。