Category Archives: ワンちゃん関連

ホテルサービス中止のご案内

背景は下記にてご説明しますが、アイビーでのホテルを中止せざるを得なくなってしまいましたことをご報告いたします。
現時点でご予約をいただいている方は大丈夫ですが、新規にホテルのご予約を受けることができません。

以下の方はお預かりできますので、ご安心ください。
・病気での入院
・手術での入院
・検査のための半日入院

今回のホテルサービスの中止の背景には、昨年6月に『動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)』の改定があります。
この法律を運用するにあたって定められた複数の法律の中に『適正な飼養管理の基準の具体化』というものがあります。
この中で、ホテルとしてお預かりする場合のケージの大きさが規定されました。

例えば、ネコちゃんの場合、ケージの高さが120cm以上必要です。
ワンちゃんの場合は、チワワさんサイズであっても横幅180cm以上必要です。

ホテルとしてお泊りするのであれば、広い方がストレスが少なく、より快適なのは間違いありません。
『動物愛護法』の改定は素晴らしいことです。

しかし、病気のワンちゃん・ネコちゃんの場合は、あまり広いと点滴のチューブが絡まったり引っ張られて取れてしまったりするため、お部屋を広くすることができません。

なにより、ホテルの子1頭当たりにそれだけのスペースを確保すると、新アイビーであってもワンちゃん3頭、ネコちゃん3頭が限界であり、病気の子が入院するお部屋が確保できません。

結論としては、法律により、健康な子のホテルサービスをお受けすることができない状況になってしまいました。

重度の病気があり、一般のペットホテルでは預かってもらえない子の場合、入院が必要という状況と思われますので、ご相談ください。

地域のホームドクターとして、ホテルサービスを中止しなければならないことは非常に心苦しいのですが、皆さまのご理解・ご協力をお願いいたします。

※一般のペットホテルでも同じ法律が適用されますが、2022年6月まで既存のケージでの営業が許可されているようです。

院長/獣医師 宮澤 裕

クッシングは免疫力が下がる!?

好評連載中(?)の【クッシング症候群】シリーズです。
これまでに、以下の点をご紹介しました。
 ・元気そうに見えるため発見しにくい!
 ・体のいろいろな臓器に影響がでる!
 ・複数のタイプがあり診断が大切!

今回ご紹介したいのは、最も厄介な点の『免疫力の低下』です。
目に見えない『免疫力』。
当然、免疫力が低下してしまうと、ちょっとしたことで大きく体調を崩します。

上記クイズの回答はもちろん④です。
怪我が治りにくく、感染症が悪化しやすく、他の臓器の病気も起こりやすくなり、踏んだり蹴ったりです。

特にアイビーでは、腫瘍の子の手術が多いのですが、
『腫瘍による体力低下』+『クッシングでの免疫低下』の組み合わせは非常に厄介です。

手術そのもののリスクも高くなりますが、
手術後に傷がふさがりにくく、なかなか治らない・・・ということに。
これを防ぐために腫瘍の子の手術前には、クッシングも含めた他の病気の総チェックを欠かさず行います。

さて、クッシングではなぜ『免疫力』が低下するのでしょうか。

クッシングのほとんどの症例で副腎ホルモンの『コルチゾール』が過剰に分泌されています。
コルチゾールは体を守るために必要なホルモンですが、過剰になると免疫力が低下したり、血栓が詰まったり、傷が治りにくかったりと、困ったことになります。

皆さんも『ステロイドは副作用が怖いよ!』なんて聞いたことがあると思います。
このコルチゾールというホルモンは、ステロイドの一種なんです。
つまり、クッシング症候群はステロイドを毎日大量に飲み続けている状況と同じなんです。

それでは免疫力も落ちるだろうな・・・。
何事もほどほどが大切なんですね!

獣医師 宮澤 裕

クッシング症候群は結局なんなのか?

最近、連載(しているつもり)の【クッシング症候群】って、結局なんなの?
が、今回のテーマです。

先に正解を発表すると④です。

副腎ホルモンが過剰になることが多い『ホルモン(内分泌)系疾患』であり、
副腎自体が腫瘍となっていることもあるので『腫瘍系疾患』でもあり、
脳の一部が黒幕となっていることが多いので、副腎は『遠隔操作』されているだけのこともあります。

前回ご紹介したような『典型的な症状』は、副腎ホルモンが過剰になっているために生じます。
元気に見えて、背景で体を蝕んでいくやっかいな病気です。

《クッシング症候群の典型的な症状》は過去ブログをご覧ください

この過剰なホルモンを合成しにくくするのが『アドレスタン』という内服です。
現在は新型コロナの影響か、流通が非常に少なくなっています。
『ホルモンを合成しにくくする』という、このお薬の特徴に注意が必要です。
あくまでも症状を緩和するお薬であって、原因を解決しているわけではありません。

そして、クッシング症候群の約85%は副腎自体の病気ではなく、脳の一部である下垂体の異常が黒幕です。
この黒幕が副腎を遠隔操作して『副腎ホルモンが過剰』な状況にしているんです。

黒幕がちょっと張り切っているだけであれば、副腎ホルモンを合成しにくくする内服でうまく付き合っていけます。
しかし、黒幕が腫瘍化していたりすると、ホルモンを抑える内服を飲んでもホルモンの上昇が抑えきれません。
その場合は、手術や放射線治療で黒幕を直接たたく必要があります。

さらに厄介なのが、『副腎ホルモン』の中でも、『典型的な症状』とは異なる症状を出す『特殊な副腎ホルモン』を出すタイプや、そもそも『副腎ホルモン』を出していないタイプがあるんです。

もう、本当に大変。

『典型的な症状』ではないタイプは以下のような症状を起こします。
・急に倒れる
・高血圧
・とても心拍数が速い
・たまに鼻出血(鼻血)
・なぜか痩せていく

上記の症状は、いろいろな病気を除外する必要がありますが、【特殊なクッシング症候群】を疑うのは後回しになります。
つまり、とても見つけにくい・・・。

『副腎ホルモン』を出していないタイプに至っては、『健康だけど念のためペットドック』をしなければ見つけられず、症状のないまま致命的なレベルに進行していることが少なくありません。

もう、本当に大変。

結局、ご家族の感じる『うちの子のちょっとした違和感』や『健康なうちにペットドック』が非常に重要になります。

クッシング症候群について書いてあるWEBサイトや飼い主様向け雑誌はたくさんありますが、獣医師目線ではこんな厄介な疾患です。

でも、『予備軍』のうちに早期発見して、タイプを判別して、症状が出るのを待つ!状況に持ち込めれば、かなり有利に闘いを進めることも可能になってきています。

我が子が『シニアなのに元気』と違和感を感じたら、お気軽にご相談ください!

獣医師 宮澤 裕

医療機器のご紹介(エコー)

アイビー自慢の医療機器の中から、今回は《超音波診断装置》をご紹介します。
いわゆる《エコー》ですね。

エコーというと、ヒトの妊婦さんの検査がイメージしやすいかもしれません。
お腹の中で赤ちゃんが動いている様子を確認するような検査なので、以下のような特徴があります。

【エコー検査の特徴】
《メリット》
 ・体への負担がない
 ・体の中を透かして見える
 ・下準備なしですぐに実施可能
《デメリット》
 ・局所は把握できるが、広範囲の全体像は把握しにくい
 ・検査者の技術力が強く反映される
 ・検査機器の解像度が強く反映される

院長が【がん】の認定医ということもあり、体内の数ミリの異常な構造を見逃さないようにこだわっています。

そして、今回の本題ですが、エコー検査の機械も現時点で最新の『ARIETTA 65V』という機種を使用しています。
スマートフォンなどもそうですが、精密機器の進歩の速さには目を見張るものがありますが、エコー機器の進歩も尋常ではありません。
医療機器メーカーさんの努力には、本当に頭が下がります。

ARIETTA 65Vのスペックはこちら

医療機器はケチらずこだわって選定しているので、以前はぼんやりしか見えなかった異常な構造がくっきり見えます!

画像の明瞭さは『クッシングの早期発見』の回をご参照ください!

ペットの死因の約半分は『がん』という時代になりました。
これはヒトと同じですね。
シニア期のペットの体内に、『もともとはないはずの何か』ができていないか、みてあげると安心ですね!

獣医師 宮澤 裕

クッシングの早期発見のために

前回は、クッシング症候群の治療薬の一部が流通していないことをご案内しました。
この【クッシング症候群】は非常に身近な疾患でありながら、発見されずに見逃されていることが多い疾患です。
それは『症状』が特殊だからです。

主に以下のような症状がみられます。
・よく食べる(多食)
・よく飲む(多飲多尿)
・お腹が張る(腹囲膨満)

一般的な感覚では、『うちの子はシニアなのによく食べて太っちゃって困るわ♪』と感じるはずです。
実際に『元気なシニア!』という子もいると思いますが、【クッシング症候群】の症状かもしれません。

その背景では、以下のような恐ろしいことが起こっています。
・免疫力の低下
・筋力の低下
・血栓症リスクの上昇
・血圧の上昇
・肝臓を中心とする臓器障害 などなど

散歩仲間で『元気だった子が急に亡くなった』という話を聞いたことはありませんか?
突然死を起こす病気の多くは『なんとなく元気がない』『ちょっと興奮すると席をする』などのサインがあります。
【クッシング症候群】は上記のように『元気に見える』ため、症状からの発見は困難です。

【クッシング症候群】を早期発見するポイントは……副腎のエコー検査です。

通常の副腎は左右ともに3~4mmの大きさですが、体格による誤差はありますが約6mmを超えると【クッシング症候群】を疑うことになります。

2021年の文献でも、副腎が既定の大きさを超えた場合の【クッシング症候群】の『診断精度は95.6%』と報告されています。

ワンちゃんの体内のたかだか数ミリの臓器を正確に描出する技術と検査機器がそろっていることが必要です。
エコー検査は痛くもなく、費用も高くありません。
【クッシング症候群】を疑う所見があったら気軽にエコーを見てみましょう!

獣医師 宮澤 裕

《参考文献》
2021 Ultrasound evaluation of adrenal gland size in clinically healthy dogs and in dogs with hyperadrenocorticism
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