Category Archives: 病気のご案内

クッシングの治療薬が復活!

クッシングの治療薬が復活

先日、『クッシング症候群の治療薬が国内で流通していない!』というご案内をしました。
現在は、すべてのサイズの『アドレスタン』の国内流通が再開しています。
お薬の費用が安くなり安心しました。
が、まだ流通が不十分なため、油断はできません。

そもそもクッシング症候群とは、副腎ホルモンが体内で過剰に分泌されることが問題です。
しかし、副腎の疾患ではなく、副腎に指令を出している脳の一部(下垂体)が黒幕なのです。

そして、『アドレスタン』は、『副腎ホルモンを低下させる』お薬です。
黒幕である下垂体が治る薬ではありません。
生涯、お薬を続けて過剰な副腎ホルモンから我が子を守るしかないのです。

国内の 『アドレスタン』 が途切れて【クッシング症候群】に苦しめられるのは避けたい。
海外の同一薬剤で治療費が高騰するのも避けたい。
そうだ!個人輸入しよう!・・・という発想に至る方もおられるかもしれません。

個人輸入は本当に危険なのでやめましょう。
獣医師が海外の医薬品ディーラーと契約を交わして手に入れる『海外の正規の医薬品』と
一般の方がWEBで入手する『海外薬の個人輸入品』は全く別物です。
『成分が安全かどうか』『ちゃんと効くか』が証明されておらず、ヒトでも健康被害が問題となっています。
もちろん 『ジェネリック』とも違うので、気軽に手を出してはいけません。

そもそも、『(WEBも含め)個人輸入業者からお薬を買う』という流れは法律で禁止されています。
厚生労働省HP

それでもWEB社会だけに、個人輸入し自己判断で使用されていることがあるようです。
ご自身の薬ならまだしも、ワンちゃん・ネコちゃんへ自己判断で診断・治療を行うのはとても危険です。
今後はWEB購入での自己判断での使用も規制が強まるようです。
新聞記事はこちら

『薬』は使い方次第では『毒』にもなりかねません。
私達は6年間の専門教育を受け、国家試験を合格して獣医師となります。
それでもすべての獣医師が同じ水準ではありません。
卒業後にどのような環境でどのような訓練を受けたかで、獣医師のスキルが決まります。
各獣医師の特性の違いは、ワンちゃん・ネコちゃんの飼い主様であれば、実感されていると思います。
普段の体調だけでなく、『薬』についても、信頼できると感じる獣医師にご相談くださいね。

ちなみに、【クッシング症候群】を完治させる治療法はまたの機会にご紹介しますね。

獣医師 宮澤 裕

豚コレラから学ぶ

豚コレラとペットの関係

『豚コレラ』というウイルス感染症が国内の養豚業界で流行しています。
※『豚コレラ』と『アフリカ豚コレラ』は別の病気です。

ヒトの食べる食肉になるため、豚コレラワクチンを打たずに感染した豚を殺処分することで流行を止めようとしたものの、収拾がつかずどんどん広がっています。

豚コレラウイルスは、豚とイノシシの体内で増殖するため、感染した動物だけ殺処分にすれば何とかなるはずですが…なぜ感染が拡大しているのでしょうか。

豚とイノシシ以外の野生動物の体内では豚コレラは増殖しません。
しかし、野生動物がウイルスを『運ぶ』役割を果たしているために、感染が拡大しています。
産業動物の獣医師はとても苦労しているようです。
 豚コレラについては農林水産省のHPをご参照ください

私たち小動物臨床の獣医師としては、今回のトラブルは他人ごとではありません。
日本のワンちゃん・ネコちゃんのワクチン接種率は先進国の中で最も低いことがわかっています。

《狂犬病について考える》

仮に、『狂犬病』が国内に入ってきた場合に、豚コレラと同じように広く拡大します。
豚コレラも日本では2007年から発生のない『清浄国』でした。
しかし2018年から国内での発生が確認され、たった1年で爆発的に拡大しています。

ちなみに『狂犬病』はすべての哺乳類に感染し、急激に命を奪う恐ろしい感染症です。

豚コレラの感染がさらに拡大すると・・・豚肉の価格が高騰していきます。
狂犬病が日本に入ってくると・・・動物だけでなくヒトも含めたあらゆる哺乳類が大量に死んでしまいます。
そもそも、狂犬病に感染した動物は殺処分となります。
ワンちゃん・ネコちゃんと暮らす私たちにとって、狂犬病は『今』は日本にないだけで豚コレラよりも怖い感染症なんです。

《混合ワクチンについて考える》

さらに、混合ワクチンで予防している感染症は、すでに国内に蔓延しています。
日本はワクチン接種率が低いため『集団免疫』は期待できません。
『我が子を守る』という目的で、毎年確実にワクチンを打ちましょう。

ワクチン接種が望ましくないワンちゃん・ネコちゃんは、ワクチン検査で免疫力を高く維持できていることを確認しましょう。
 ※ワクチン検査についてはこちら

豚肉の価格も心配ですが、我が子のワクチンも重要ですよ!

獣医師 宮澤 裕

高脂血症の治療薬がなくなる!?

高脂血症の内服がなくなる!?

ヒトと同様に、ワンちゃん・ネコちゃんにも中性脂肪やコレステロールが上がってしまう【高脂血症】があります。
血液中の脂質が過剰に上がってしまうと様々なトラブルが続発するため、注意が必要です。

特に注意が必要な疾患として、【膵炎】があげられます。
膵炎は『腹痛』『嘔吐』『下痢』が主体であり、死亡率も非常に高い怖い疾患です。

さて、ワンちゃん・ネコちゃんの【高脂血症】でよく使う『リポクリン』という薬剤の製造が終了となりました。
ヒトの【高脂血症】でより良いお薬が開発されたため、リポクリンが中止になったようです。

ワンちゃんはリポクリンの代替薬があるため、ご心配は不要です。

ネコちゃんはリポクリンの代替薬がありません…。
今後は、ダイエット・内服・サプリなどで体質改善をしていくしかありません。

【高脂血症】は【脂質代謝異常症】へと病名も変わりましたが、名前の示す通り『脂質をうまく代謝できない』状況です。
つまり、体質を改善していくしかないということになります。
ヒトと同様に、生活や食事を工夫していく必要があり、そのためには保護者の知識と継続力が必要です。

ヒトとペットの高脂血症の比較

昔は、ワンちゃん・ネコちゃんの【高脂血症】は話題にすらあがりませんでした。
長生きできる子が増えてきたからこその『生活習慣病』です。
使える内服がなくなる今こそ、我が子のために本気を出しましょう!

獣医師 宮澤 裕

《ワンちゃんの心臓病セミナー》

『〇〇ちゃんの心臓の音がおかしいですよ』とお伝えすると、
『でも、うちの子とても元気よ』と驚かれることがとても多いです。

心臓病の症状は以下のようなものが代表的です。
・咳
・腰が抜ける
・疲れやすい

『咳』『腰が抜ける』はわかりやすい症状ですが、
我が子の『疲れやすい』は、意識しなければ『老化』と区別できません。
もしくは、安静時の呼吸数を数えれば、症状が出る前段階を見つけられます。

『元気なんだからいいじゃない!』と思うかもしれません。
しかし、何とかして心臓病を早期発見・早期治療したい理由があります。

犬の心臓病の生存期間

最近の報告で『肺水腫を発症した後の生存期間』が明らかになりました。
これまで経験的に感じていたものが数値となった重要な研究です。
初回の肺水腫を無事に乗り切っても、その後の生存期間は1年が目標となります。
 ※参考文献はこちら(英語)

しかし、『肺水腫』を起こす前に心臓病を見つけ、
進行を遅らせてしまうことで長く元気に生きられます!

犬の心臓病と心臓の大きさ

早期発見の工夫や、心臓病との付き合い方など、
まさに命にかかわる知識を学んで損はありません!
2019年にはワンちゃんの心臓病の国際的なガイドラインが改定されました。
  ※ACVIMガイドライン2019はこちら(英語)

それも踏まえ、心臓病を得意とする獣医師・遠洞がわかりやすく解説します。
シニア世代のワンちゃん、または心臓病の好発犬種の飼い主様はぜひお越しください!
 ※好発犬種:キャバリア、ヨーキー、チワワ、マルチーズ、ダックスフンドなど

ワンちゃんの心臓病セミナーの詳細はこちら

獣医師 宮澤 裕

意外と知らない健康の小ネタ(2)

ノミ・マダニ関連のマメ知識

前回は『一斉風靡したフロントラインが廃れた理由』などをご紹介しました。
 ※詳細は前回の記事をご参照ください
今回は、生活に直結するノミ・マダニ関連の勘違いをご紹介します。

《ノミ・マダニの季節は夏?》

↓のグラフでわかるように、”今”が最もマダニの多い季節なんです。
最も暑い季節は、屋外で生活するマダニもしんどいのかもしれませんね。

しかも将来のある『幼ダニ』のピークです。
この時期にマダニをご自宅に持ち帰らないように注意が必要です!

マダニの生活環

《住宅街にはいない?》

当然、住宅街にもノミ・マダニがいます。
先日、アイビーの目の前の道路にタヌキさんがいました。
近くのゴルフ場で大繁殖しているそうです。
タヌキ、ハクビシンなどの野生動物、または外猫さんがノミ・マダニを運んでいるんです。

アイビー前でみつけたタヌキ

実は日本のマダニ分布を調べた文献もあるんです。
四季があり、地域によって気候が異なる日本は、諸外国に比べてマダニにも多様性があるようです。
その結果、農村を好むマダニだけでなく、市街地を好むマダニもいるそうです。
マダニにも個性があって可愛いような気がしてきます。

※参考文献:Ixodid tick species recovered from domestic dogs in Japan.

今回は、ノミ・マダニのトピックスの2回目でした。
また、誤解の多い内容や、身近な内容をご紹介していきます。
トピックスのご希望があれば、ぜひ教えてください!

獣医師 宮澤 裕