Category Archives: 病気のご案内

草を食べるべきか!?

最近、『嘔吐』『下痢』で受診されるワンちゃん・ネコちゃんが非常に多いです。
外出自粛によるご家族の生活リズムの変化、急な気温の変化などが要因ではないかと思います。

そしてお話を伺う中で、『草を食べたがる』というフレーズをよく聞きます。
ペットショップでも、ペットグラスなどの名前で販売されています。
ワンちゃん・ネコちゃんにとって『草』はどのような意味を持つのでしょうか。

【ワンちゃん】
ワンちゃんが草を食べたがるときは、通常は気持ち悪い時です。
草を食べて、胃のチクチク感で嘔吐を誘発し、過剰にたまった胃液を吐こうとする行為です。
だから、先のとがったチクチク系の草だけを食べているはずです。

胃液を吐いて一時的にスッキリしても、原因は治っていません。
また、大量の草を食べて腸閉塞となり手術が必要になる子もいます。

《イヌ結論》
ワンちゃんが草を食べようとしたら、食べさせずに病院へ!

【ネコちゃん】
肉食だから肉だけ食べればよいというのは、手作りフードや偏った思想のプレミアムフードに多い勘違いです。
ネコちゃんは肉食性ですが、植物由来の食物繊維も必要です。
野生のネコ科の動物は、肉ばかり食べているわけではありません。
草食動物の腸内で程よく消化された草を大量に食べています。

では、野生のネコ科動物が自然に生えている草を食べる時はどのような時でしょうか。
これはワンちゃんと同様に、吐きたい時です。
ネコちゃんの場合は胃液ではなく、胃にたまった毛玉を吐くためにたまに草を食べる習性があります。
ということは・・・、ちゃんとブラッシングをしてあげれば、吐かせる必要はありません。

《ネコ結論》
ブラッシングをしよう!
猫草は吐いて食道が荒れる原因となるので、与えないことが望ましい!

ワンちゃん・ネコちゃんに共通して、高品質な食事と、日々のスキンシップが重要といえます。
飼い主様の『?』という気づきや違和感は、健康のサインであることが多いです。
気になることがありましたら、お気軽にご相談ください!

獣医師 宮澤 裕

参考資料:Small Animal Gastroenterology

新型コロナが猫さんにも感染?

先日、『新型コロナウイルスが猫から猫に感染する』という報告がありました。
この報告には注意が必要なので、ご紹介させていただきます。

この研究は、『猫に感染させたら猫の体内でウイルスが増殖した』という実験的なものです。
しかも『発熱などの症状は示さなかった』という結果です。
現実的な環境でもネコさんに感染するのか?という点が重要です。

関連するであろう情報を列挙します。

1.ペットからヒトに感染するか

現時点で、世界で400万人を超える感染者が発生している中で、感染者(ヒト)からワンちゃん・ネコちゃんに感染したかもしれないという報告が数例のみあります。
しかし、『ペットが発症した』または、『ペットからヒトへ感染した』という報告はありません。

参考)厚生労働省『新型コロナウイルスはペットから感染しますか』

2.ペットでの陽性率

動物専門の検査センターが独自に行った調査では、7500頭以上の犬・猫で検査を行い、猫2頭で陽性反応があったと報告されています。
つまり、ヒトが運んできてペットに移すことはあっても『ペット間で流行していない』といえます。

参考)世界小動物獣医師会『新型コロナウイルス感染症について』

3.ペットが発症するか

大手動物保険会社の集計では、新型コロナが流行してから、ペットの呼吸器疾患が増えたという変化はないそうです。
日々の診察の中でも、現在は『嘔吐・下痢』の子が非常に多いのですが、『発熱・咳』という症状の子は増えていません。

『嘔吐・下痢』の子が増えているのは、テレワークや外出の自粛などで、飼い主様の生活リズムが変わったことも要因かもしれません。

4.どのように生活すべきか

今まで通り、飼い主様(ヒト)が感染しないことが重要です。
ワンちゃん・ネコちゃんを健康に保ち、マナーを守ったスキンシップをとることも今まで通りです。

FIPウイルス(コロナウイルス科)の研究の第一人者であり、日本獣医がん学会や日本臨床獣医学フォーラムの会長を兼任されている石田卓夫先生のコメントをご参照ください。

参考)※中段の『JBVPからのhttp://www.jbvp.org/index.htmlお知らせ』をクリックしてください

ペットのために何ができるのか…。
結局、飼い主様が感染しないで済むように、ご自身の身を守ることが重要であることに変わりはありません。
外出を自粛して、我が家のペットと過ごす時間を大切にする良い時期です。
楽しく、健康に過ごしましょう!

獣医師 宮澤 裕

予防接種とコロナウイルス

こんにちは!今週は獣医師の阿部が担当します。

4月になり暖かい日も増えてきましたが皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

4月になると動物病院は予防接種に、フィラリア検査と大忙しですが、今年はコロナウイルスの影響か、いらっしゃる方も例年より少ないように感じます。

コロナウイルスが心配…でも予防もしないと…と困っている方のために、今回は各予防についてご紹介します。

この時期のワンちゃん、ネコちゃんの予防には狂犬病ワクチン(ワンちゃんのみ)、フィラリア予防があります。

狂犬病ワクチンの予防接種は国のルールとして定められたものですが、接種が遅れても日本国内のワンちゃんが狂犬病に感染する心配はありません。

また、当院では大和市、相模原市、座間市にお住まいの方は4月から8月まで代行手続きが可能です。(手数料はかかりません)

そのため、少し時期をずらしてコロナウイルスの影響が落ち着くまで待つ方が安心ですね。

混合ワクチンは1年に1回の接種が必要ですが、ワンちゃんへの負担がかからないように、狂犬病予防接種と時期をずらす方が安心です。

神奈川県では、フィラリア予防期間は5月~12月までとされています。

ワンちゃんは、安全にフィラリア予防薬を始めるため、フィラリア検査を5月上旬までにフィラリア検査を受ける必要があります。

ネコちゃんはフィラリア検査を行わずにフィラリア予防を始められるため、外来の込み合わない時間に是非フィラリア予防薬をお受け取りにお越しください。

いずれの予防でも《予約診察》や《ネコノメシステム》を活用すると混み合う心配がなく安心ですね。

それではお体に気を付けてお過ごしください。

獣医師 阿部

新型コロナはペットに感染するのか

『新型コロナウイルスはペットに感染するの?』という問い合わせが非常に増えています。

香港でペットのワンちゃんから新型コロナウイルスが検出された!?
ベルギーでペットのネコちゃんから新型コロナウイルスが検出された!?
確かに、ペットと暮らす我々には怖いニュースです。
やはりペットに感染するのでしょうか。

現時点での答えは『新型コロナウイルスはペットに感染しない』です。

以前、ブログでご紹介したように、以下が主な理由です。
・ウイルスごとに感染できる動物種が決まっている
・ペットとヒトではコロナウイルスの属が異なる

世界小動物獣医師会(World Small Animal Veterinary. Association:WSAVA)の最新の報告でも、『感染しない』とされています。
もちろん、ウイルスがいつどのような変異を起こすかわからないため、
WSAVAでも『本件は急激な展開を見せることがある』としています。
つねに最新情報を把握しておきましょう!

《WSAVAの最新(3月20日)の発表はこちら》

そもそも、世界中で何万人ものヒトが感染していて、一緒に暮らすワンちゃん・ネコちゃんの2頭のみが感染するということはあるでしょうか。
すでにペットに感染できるように突然変異しているなら、ペットの感染例が多数報告されているはずです。
ペットが感染したのではなく、『ウイルスに汚染されていた』という表現が最も正しいように思います。

まずはご自身が感染して周囲に広げてしまうことのないように、手洗いやうがいなどの感染防御を徹底しましょう。

アイビーでは、最強の消毒液の1つである『バイオウィル』がスタッフとペットを守っています。
安心してご来院ください。

ご家族に免疫力の低下している方がおられるなど、しっかり消毒・殺菌したい場合にはオススメです。
医療用の消毒液なので、ペットにかけても問題はありません。
ご自宅でバイオウィルが必要な方のために、少量ですが入荷できました。
必要な方はお気軽にお声がけください。

※ご自身が『新型コロナウイルスに感染』している可能性がある場合は、ご来院前にご一報ください。

外出を自粛すべきこの時期だからこそ、ご自宅でワンちゃん・ネコちゃんとのスキンシップを楽しむ時期にしましょうね!

獣医師 宮澤 裕

【犬アトピー】のマメ知識

ワンちゃんの約14%がアトピー性皮膚炎にかかっていると報告されています。
特にラブラドール・レトリーバーや柴犬などでの発症が多いことが知られています。
今回はそんな『ワンちゃんのアトピー』に関する問題です。

《問題》
以下の4つの中で、ワンちゃんのアトピー性皮膚炎に関する正しい知識はどれでしょう?

《選択肢》
①チョコレート色のラブラドールは黒いラブラドールよりもアトピーが多い
②子犬の頃に『皮膚用のフード』を食べて育つと、生涯にわたってアトピーが減る
③成長期を郊外で過ごした犬は、都会育ちの犬よりアトピーが少ない
④布製のベッドなどを使っているとアトピーになりやすい

《正解》
①~④全て正しい!

実は①~④の全てが正しいという意地悪な問題でした。

ラブラドール・レトリーバーの中でも、チョコレート色の子は、黒い毛色の子よりもアトピーの発症率が1.94倍高いことが明らかになりました。
2440頭も集めた気合の入った報告です。

そして、成長期に『皮膚用のフード』を食べていた子は、成長期に『市販フード』を食べていた子よりも、【アトピー】の発症率が約1/4に減ることがわかっています。

また、2019年には、成長期に自然の多い地域で育ったワンちゃんは、都会で育ったワンちゃんよりも【アトピー】になりにくいことも明らかになりました。
この報告では『現在の環境 』 が自然が多いか都会かは関係がないことも合わせて報告されています。

②③は成長期の要因であるため、今となってはどうしようもありません。
しかし、④の『布製のベッド』や『布製のソファー』を使用していると【アトピー】になりやすい点は、これからでも改善が可能です。
これはハウスダストなどが布製品にたまってしまうことが要因と考えられるため、ベッドやソファーのカバーをたまに洗うなどの工夫で改善できそうです。

①は【アトピー】が遺伝的な要因を持っていることと関連しています。
一方、②~④の項目は環境的な要因も影響が強いことを示しています。
とても納得のいく情報だったので、意地悪問題としてご紹介しました。

お散歩仲間で『うちの子アトピーなの』というフレーズを聞くことは少なくないのではないでしょうか。
【犬アトピー性皮膚炎】は、皮膚病のうちの約14%程度であり、それほど多くありません。
【犬アトピー性皮膚炎】の診断は複雑なステップを踏んでやっとたどり着くものです。
自己判断でワンちゃんの生涯を痒くしないように、お気軽にご相談くださいね。

獣医師 宮澤 裕

参考文献
・2015 The effect of long-term feeding of skin barrier-fortified diets on the owner-assessed incidence of atopic dermatitis symptoms in Labrador retrievers.
・2019 Environmental risk factors for canine atopic dermatitis: a retrospective large-scale study in Labrador and golden retrievers.