Category Archives: 病気のご案内

病気の紹介①

こんにちは、今回は獣医師の阿部が担当いたします。

突然ですがクッシング症候群という病気をご存じでしょうか。

基本的にはワンちゃんの病気で発生率も高い病気です。アイビーでも治療中の子がたくさんいます。

今回はこのクッシング症候群について紹介させていただきます。

クッシング症候群は副腎という臓器から出るホルモンが過剰となり、さまざまな症状を引き起こす病気です。

よく見られる症状に、多飲多尿、多食、腹部の膨満、脱毛といったものがあります。

原因は、以下の2つの場合があります。

①脳の異常が原因の場合(クッシング症候群の85%)

下垂体(脳の一部)が異常に活性化し、「副腎ホルモンを分泌するように」という命令が過剰に出されているため、副腎ホルモンが過剰となっている状態です。

②副腎の異常が原因の場合(クッシング症候群の15%)

副腎が腫瘍となって、副腎ホルモンを過剰に分泌しています。

エコーやホルモン測定をしたりすることで、

「①脳の異常」「②副腎の異常」のどちらかをおおまかに推測することができます。

基本的な治療は多くの場合、内服による内科治療になります。

クッシング症候群の治療は、治すことではなく、生活の質の改善が目的となります。

しかし、治療によって、普通のワンちゃんと同じような生活をおくることができます。

クッシング症候群は『多飲多尿、多食』といった、病気と気づきにくい症状しかない場合もあります。

健康面で気になるところがあるときはぜひご相談ください。

シンパリカの有効期限の延長

ワンちゃん用のノミ・マダニ駆除薬の『シンパリカ』の使用期限が1年延長されました。
メーカーさんが安定性試験を重ね、行政からOKが出たとのことです。
現在流通している製品に印字されている使用期限にプラス1年の保存が可能となります。

お薬の安全性が再確認されたというご案内なので、安心してご使用ください。

メーカーからのご案内

ノミ・マダニは、刺された部位が痒いということ以上に、いろいろな感染症を運んでくることが重要です。
特に、【重症熱性血小板減少症(SFTS)】はいまだに治療法がなく、感染したネコさんの致死率は50~60%と報告されています。
関東ではまだペットでの発症は確認されていませんが、関東の野生動物(外ネコさんやタヌキさん)の感染が確認されているため、油断はできません。
(ペットでの感染は静岡まで北上してきています)

【SFTS】はヒトの場合も治療法がなく、死亡率が約13%と非常に怖い感染症です。(2020年13月30日時点)
獣医師・看護師の感染例も5例報告されていますが、『感染したペットの飼い主様』の感染報告が中心です。

詳細は国立感染症研究所HPへ

気温が上がって過ごしやすくなってきましたが、感染症が活発になる季節でもあります。
加齢によって発症する疾患は仕方ない面もありますが、予防できる感染症はしっかり予防しておきましょう!

獣医師 宮澤 裕

ネコちゃんの乳腺腫瘍

本日は獣医師 富田が担当します。
今日はネコちゃんの乳腺腫瘍と避妊手術についてお話します。

ネコちゃんの乳腺腫瘍は多くが悪性腫瘍(約90%)で寿命に大きな影響を与えます。
手術してガンを摘出しても、多くの患者さんが再発や他の臓器への転移をしてしまいます。
アイビーにも手術や術後の抗がん剤治療を頑張っている患者さんがいらっしゃいます。

そんな恐ろしい病気ですが、発症率を劇的に下げる方法があります!
それは早期の避妊手術を行うことです。具体的には、初回発情が来る前(約5-6か月齢)が手術適期です!
1回発情が来てしまうと発症率は1.5倍、2回で9.8倍に跳ね上がります

最近女の子のネコちゃんをお迎えされた方、これから女の子のネコちゃんをお迎えする予定のある方は是非、若いうちに避妊手術をご検討ください!
また、避妊手術が遅れてしまったネコちゃんも、早期発見・早期治療をすれば長生きできることが証明されています。
一度健診にお越しくださいね。
避妊手術に関して、ご不明な点がありましたら、診察にてご相談ください!

最後に、皆さんはキャットリボンをご存知でしょうか。
以前にもブログにて紹介しましたが、ネコちゃんの乳がんの啓発運動を行っています。
こちらのHPも併せてご覧いただき、乳がんの早期発見を心掛けましょう。

我が子との大切な時間をより長く過ごすために、ご家族の皆様ができることがたくさん掲載されています!

冬の乾燥からノドを守りましょう!

冬はノドがイガイガしますね。
今年はマスクを着けている時間が長いからか、ノドのイガイガが軽い気がします。
『新型コロナあるある』でしょうか。

呼吸器の乾燥は、不快感だけではないのです!
吸い込んだ空気が通る気道は、表面に細かなニョロニョロがたくさんあり、
気道に入り込んだホコリや細菌などを入口方向に運んでいく機能があります。

気道が乾燥してしまうと、ニョロニョロたちが弱ってしまい、呼吸器感染症のリスクがグッと上がります。
なので、冬の環境の加湿は非常に重要なんです。

呼吸器というと、ヒトの耳鼻科で白い蒸気の吸入処置を受けたことのある方も多いと思います。
あれは、呼吸器を守るあれやこれやの薬剤を蒸気にしたものなんです。
それで気道を潤しつつ、あれやこれやの薬剤で症状を緩和するという非常に効果的な薬剤投与法です。
ネブライザー、ネブライジングなどと呼ばれます。

実は、ペットにもネブライザー処置が可能です。
呼吸器疾患で入院/通院している子に頻繁に使っています。

また、呼吸器感染を起こすウイルスは一般的に『乾燥した環境』の方が病原性を長く保ち、『湿度の高い環境』では病原性を失うのが速くなります。
ちなみに新型コロナウイルスは乾燥環境で3時間も病原性を維持できるそうです。

つまり、環境の加湿には、『気道を守る効果』と、『病原体を弱らせる効果』があるんです。
だから、乾燥する冬にインフルエンザの患者さんが多くなるんですね!

シニア期に入ると気道の機能が低下し、気管支炎や肺炎などを起こしやすいのは、ヒトもペットも共通です。
シニアの子と暮らしている方は、お部屋はしっかり加湿をしてあげてください!
ご自宅でネブライザー処置をすることも可能ですが、まずは加湿からやってみましょう!

獣医師 宮澤 裕

寝たきり、後肢の麻痺による「褥瘡」の防ぎ方

今回のブログは看護師の北島が担当します。
本日は寝たきり時に起こりやすい褥瘡についてです!

・褥瘡とは、一般的に「床ずれ」にあたります。

高齢動物や後肢麻痺などの障害を持つ動物は、自力で姿勢を変えることが困難です。そのため、寝たきりの状態が長く続くと、特定の部位が圧迫され続け血行障害により皮膚などの細胞が壊死を起こし褥瘡が生じます。

特に痩せている動物では、骨の突出した箇所にできやすいため注意が必要です。

また、犬猫は皮膚が毛に覆われている事が多いので、発見が遅れ気付いた時にはかなり進行していることも少なくありません。そのため、褥瘡ができてからではなく発生するリスクが生じた段階から、ご自宅での正しい管理や褥瘡対策を始めましょう。

寝ながら走る犬のイラスト

褥瘡の2つの予防ケアポイント
①環境づくり
褥瘡を防ぐためには、体圧を分散し全身を面で支えるマット選びが重要です。
マットにも様々な種類がありますが、水洗いができる、高反発、通気性が良いものが予防に最適です。

②衛生管理
排泄物が付着して不衛生な状態が続く事も褥瘡の誘因となります。
・被毛や皮膚の表面の微量な汚れ
軽度の汚れは蒸らしたタオルや、洗い流さないタイプのボディシートを活用しましょう。蒸らしタオルは温めることで血行促進や、リラックス効果があります。やけどや擦りすぎに注意しましょう。

・皮膚にしっかりと付いた汚れ
下痢便や、尿が皮膚にまで付着した場合は、拭き取るよりも洗い流した方が衛生的です。部分洗いが困難な場合は、専用の洗浄液などを活用しましょう。

・冬場のジェルマットの使用について
ジェルマットの下にヒートマットやホットカーペットを敷くと、熱がジェルに伝わり低温やけどを引き起こします。また、床が冷えているときも同様にジェルが冷たくなり体温を下げてしまうことがあるので注意が必要です。

・マットの上にタオルを何枚も重ねない
マットの上下にタオルや、シーツを何枚も重ねてしまうと通気性が効果を発揮せず、熱がこもる原因になります。また、痩せている動物ではタオルやシーツのシワから、血行阻害や痛みを伴う場合もあります。マットの上は最小限で管理しましょう。

【すでに褥瘡ができている場合】
高反発マットの上にジェルマットを使用すると、褥瘡による疼痛の緩和、治癒の促進に役立ちます。

褥瘡の予防ケアは、日々生活を共にしているご家族しか行えません。
マットなどを正しく使用し、手厚いケアでカバーしましょう。