膵炎の死亡率と新しい療法食

ワンちゃん、ネコちゃんともに【膵炎】はよく出会う病気です。
しかし、あまり認識されていない病気でもあります。
また、ワンちゃんとネコちゃんで症状や背景などに多くの違いがあります。

《ワンちゃん》

嘔吐・下痢・腹痛が主症状であり、2019年の文献では初期死亡率も46.1%と報告されています。
2018年には、世界初となるワンちゃんの膵炎治療用の注射も開発されました。

【高脂血症】が膵炎の誘発因子として重要であるため、【膵炎】の治療および再発防止の観点から『低脂肪食』が非常に重要とされています。
ちなみに、中性脂肪が850以上になると【膵炎】の発症率が約5倍になることが知られています。
今月から流通が始まった《ストマックケア(低脂肪)》は嗜好性が良く、すでに大人気の低脂肪食です。

《ネコちゃん》

ワンちゃんと同様に、嘔吐・下痢が出る子は稀です。
なんとなく食欲がない、食欲にムラがあるなど、わかりにくい症状のみの子が多いです。
腹痛や吐き気があるものの、我慢してしまうようです。

実際に、何も症状のないシニアネコちゃんの18.8%が【膵炎】にかかっていたという報告も出ています。

また、【高脂血症】と関連があると考えられているものの、治療や再発防止の観点での食事管理としては、『消化性の高いフードが良い』『低アレルギー食が良い』と文献によってまちまちであり、統一見解がありません。

《重要な共通事項》

膵臓は食事中の脂肪分を分解できる唯一の内臓です。
そのため、脂質過剰な食事、無分別な食生活は膵臓への悪影響が強いと考えられています。
当然、品質の悪いフード、保管状態の悪いフードは、食事中の脂質が変性しているため、膵臓への負担が増すことが予想されます。
自己判断ではなく、医学的に高品質なフードが推奨されます。

また、【膵炎】が治りにくい子は、背景に黒幕となる疾患が隠れていることが多いです。
特に背景疾患として【腫瘍】が見つかることが非常に多いです。

《まとめ》

ワンちゃん・ネコちゃんともに、普段から高品質なフードを選んであげることが重要なようです。
そして、飼い主様の『なんとなく体調が悪い』と感じる感覚がとても大切です。
気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

獣医師 宮澤 裕

《参考文献(犬)》
Comparison of initial treatment with and without corticosteroids for suspected acute pancreatitis in dogs.