ネコさんに多い皮膚病の1つに【皮膚糸状菌症】が挙げられます。
特に免疫力の低い子猫さんやシニア猫さんに多くみられます。
『糸状菌』は本来は土壌にいるカビの一種ですが、動物の皮膚で繁殖します。
つまり、『みずむし』と同類の皮膚病です。
ネコさんだけでなく、ワンちゃんやヒトにも感染する『人と動物の共通感染症』の1つです。
以前から室内ネコで発症することに違和感を持っていたのですが、
無症状のネコさんも、体毛に『糸状菌』を持っているようです。
しかも長毛種の方がその保有率が段違いに高いことがわかりました。
毛量が多く、『糸状菌』の胞子がからまって残ってしまうのでしょうね。
しかも、『糸状菌』を保有しているネコさんと、保有していないネコさんでは、
血液検査にも違いが認められたようです。
『糸状菌』を保有しているネコさんの方が、血液の濃度がやや低く(ごく軽度の貧血)、
白血球が多いことがわかりました。
白血球が多いというのは、炎症が起きている、
または身体的なストレスがかかっていることを意味します。
無症状であっても、『糸状菌』を保有していると体に負担がかかるようですね。
しかし、これらの変化はごく軽度であり、いかなる疾患でも起こりうるレベルなので、
【皮膚糸状菌症】の診断には使えません。
【皮膚糸状菌症】の診断は、他の皮膚病を除外して、その後に『糸状菌』を検出して初めて確定します。
つまり、皮膚科を得意とする獣医師でも、複数回の皮膚検査を行うのがセオリーです。
今回の結論は、『こんな症状をみつけたら要注意!』ではなく、
健康に見える猫さんも糸状菌を保有している可能性があるので、
『普段からブラッシングして胞子を除去しておきましょう!』となります!
特にブラッシングの大変な長毛のネコさんこそ、ブラッシングを頑張りましょう!
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2020 Comparison of subclinical dermatophyte infection in short- and long-haired cats
獣医師 宮澤 裕