Category Archives: 病気のご案内

嘔吐・下痢が多発しています!

ワンちゃん・ネコちゃんの嘔吐・下痢が多発しています。
お腹が冷えて、胃腸の機能が低下してしまうのか…。
クリスマスや年末年始などでヒトの生活リズムが乱れ、ワンちゃん・ネコちゃんに影響が出るのか…。
ワンちゃん・ネコちゃんも、いつもよりも美味しいものをたくさんもらって、お腹がびっくりするのか…。

とにかく、嘔吐・下痢の子が本当に多いです。

元気いっぱいの若手世代であれば、軽度の消化器症状はそれほど深刻に受け止めなくても良いかもしれません。
しかし、チビッ子世代、シニア世代には、嘔吐・下痢による脱水が次のトラブルのきっかけとなることが多いです。

また、『持病』をもっていて継続してお薬を服用している子にとっても、嘔吐・下痢があると普段のお薬の効果が劇的に低下してしまいます。
『持病』のある子の嘔吐・下痢はなるべく早く治したいので、症状が出てしまった場合はお早めに受診をお願いします。

そして、年末年始は誤食事故が多発します。

普段置かないところにちょっと置いた物を食べてしまうのです。
間違って食べてしまった!と気づいたら、とにかくご連絡をお願いします。
すぐであれば吐かせる処置で解決する可能性が高まります。
数日様子を見てからだと、お腹を開く手術になる可能性が高まります。

それでも、救急認定医の中でも外科手術を得意とする立場としては、仮にご来院が遅れても『医薬品』でなければ開腹手術で摘出できるため、”なんとかなる!”と思います。

しかし、誤食の中でも『ヒトの医薬品』の誤食は迅速な対応が必要です。
当たり前のことですが、『医薬品』を誤食して、症状が出たときにはすでに体内に吸収されています。
吸収された薬剤に対して『中和できる薬物』が存在しない医薬品が大半なんです。

ご自身がお薬を服用する際には、以下の点に注意してあげてくださいね。
・ポロリと落とした時のためにシンクなどで服用
・残りのお薬は戸棚や引き出しにしまう
・誤食してしまったらすぐアイビーへ電話

では、できるかぎり『規則正しい生活』『特別なオヤツは控えめ』を意識して、我が子と楽しい年末年始をお過ごしくださいね。

獣医師 宮澤 裕

フィラリア症とは?

今回は看護師の古川が担当します。

突然ですが、アイビーでは、ワンちゃんのフィラリア症を予防する「プロハート」というお注射の予約が始まっています。

一度の注射で一年間、フィラリア症を予防できるという特徴を持っています。

アイビーのホームページではその「プロハート」の予約はもちろん、メリットやデメリットについて紹介しています。

そこで今回の私のブログでは「プロハート」が予防できる病気、『ワンちゃんのフィラリア症』について改めて紹介しようと思います。

フィラリア症とは

フィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊が媒介する寄生虫感染症です。

フィラリアに感染しているワンちゃん(犬A)の血液にはミクロフィラリアという仔虫がいます。そのワンちゃんの血液を蚊が吸うことで、蚊の体内にミクロフィラリアが移動します。

 そしてその蚊が他のワンちゃん(犬B)を刺すと、ミクロフィラリアがそのワンちゃんの体内へと移動します。

 フィラリアは皮膚から血管へ入り、最終的には心臓に寄生し、その後フィラリアはミクロフィラリアを産み、全身に広がります。

寄生する場所は心臓なので命にかかわります。

フィラリア症の症状は?

ワンちゃんにフィラリアが感染しても、気づくことはできません。

フィラリアが成虫になり、大量の幼虫を生むようになってから症状が出始めます。

軽度・・・無症状、時々咳をするよう、運動を嫌がる

中度・・・咳が増える、運動を嫌がる、元気がなくなる、食欲低下

重度・・・運動後の失神、呼吸が苦しそう、持続的に咳がでる、おなかのふくらみ、全身状態の悪化など

さらに、フィラリアの量が多いと、虫が血管に詰まり、致死的な急性症状を起こすことがあります。

フィラリア症予防の前には検査が必要!

「フィラリアを予防する薬」というと「フィラリアが体内に入らないようにする薬」というイメージを持ちやすいですが、間違いです。

実際は駆虫薬であり、「体内に入ったミクロフィラリアを駆除し、心臓に到達しないようにする薬」です。

万が一感染している状態で予防薬を飲んでしまうと、血管内に多数寄生していたミクロフィラリアに影響し、ショックを起こしてしまう可能性があります。

ですので、事前検査はとても大切なものなのです!

いかがだったでしょうか?

改めてフィラリアについて知るととても恐ろしい病気です。

しかし、正しく予防することでワンちゃん命を確実に守れる唯一の感染症です!

フィラリア症の予防薬の種類はいっぱいあります。

フィラリア以外の寄生虫も予防してくれるもの、美味しいお肉タイプのもの、プロハートのようにお注射で予防できるものなど様々です。

お家の子に合うものを一緒にみつけましょう!

残念ながら、1年間も効果が続く「プロハート」はネコちゃんのフィラリア症には使えません。

また、ネコちゃんのフィラリア症はルールが全く違うので、またの機会にご紹介しますね。

クッシング症候群の治療薬が値上げ!

【クッシング症候群】の治療薬が12月1日から値上げとなるようです。

今年は【クッシング症候群】の治療薬が長期間にわたって、国内での流通が止まってしまう時期がありました。
飲まないわけにはいかないお薬なので、手に入らずに困った病院さんも多かったようです。
現在は無事に流通していますが、物流の問題での価格高騰でしょうか…。

治療中のワンちゃんは少し早めに続きの分を補充しておかれると、治療費が少し抑えられるかもしれませんね。

さて、【クッシング症候群】の治療中ではない方は、『???』かもしれませんね。

お腹がぽっちゃり!
よく食べる!
お水をよく飲んで、オシッコもたっぷり!
元気いっぱい!

というワンちゃんを見かけたら、
『おぉ、元気だね!ちょっとダイエットしようか?』と思うのが普通ですよね。

でも、この4点は【クッシング症候群】でよくみられる症状なんです。
ググってみると『痒みのない脱毛』『皮膚の石灰化』『シッポの脱毛』なんて書いてないですか?
この3つの症状は獣医学生が、専門課程で習う典型的な症状です。

しかし、これらの症状がみられたら、すでにかなり進行した状況です!
現代人のググり病(←こんな言葉ないですか?)の怖い点で、真面目な方ほど古い情報や間違った情報を信じてしまう…。

動物医療は急速に進歩しているので、初期に発見できるんです。
【クッシング症候群】に至っては、発症前から発見可能!
文献的には、発症からの生存期間は約2年とされています。
でもアイビーの【クッシング症候群】の子達はみんな元気に長生きです。
だからこそ、お薬の価格高騰は困ってしまうのですが…。

動物病院は『病気をしたら行く』ところではなく、『病気なく元気に過ごす』ために活用するところです。
ハミガキ練習、体重管理、その子に応じた環境整備、問題行動やしつけの相談、各種勉強会など、気軽にお越しください。

獣医師 宮澤 裕

てんかん発作は○○○で改善!?

ワンちゃんの111頭に1頭が【てんかん発作】をもっていると推定されています。
従来の治療法では、約20~30%のワンちゃんは良好なコントロールができないとされてきました。*1

ちなみに、発作中は、脳内で異常な電気信号が生じています。
発作が5分以上つづいている場合、脳に障害を受けていくため、治療が必要です。
1回の発作がごく短時間であっても、回数が多いとやはり脳に障害を受けます。

ここで重要なのは、国際的なガイドラインで『てんかん発作は発作頻度を半分にすることが目標』とされているということです。
さまざまな医薬品を組み合わせても30%近くのワンちゃんは、発作頻度を半分にできないんです。

近年の報告では、医薬品ではなく療法食を使用する事で、以下のように大きな成果が得られることが証明されました。
従来の医薬品治療と併用することで、さらなる改善が期待されます。

《てんかん用の療法食》*2
・71%の犬の発作頻度が減少
・48%の犬の発作頻度が半分以下に減少
・14%の犬の発作が完全に消失

この療法食は、神経伝達を調整する成分を多く含有するため、脳の過剰な興奮を抑える効果があるそうです。
最近の獣医療の進歩は医薬品だけでなく、食事にも大きな変化をもたらしています。
我が子の食事選び、サプリ選びも自己流ではなく、医学的な根拠があると安心ですね。

ヒトの医療と同様に、獣医師も専門分野・得意分野があります。
『てんかん発作』などの神経科のトラブルでお困りの方は獣医師・五十嵐へご相談ください!

アイビーのスタッフ紹介はこちら

《参考文献》
*1:Therapeutic Serum Drug Concentrations in Epileptic Dogs Treated with Potassium Bromide Alone or in Combination with Other Anticonvulsants: 122 cases (1992-1996).
*2:A randomized trial of medium-chain TAG diet as treatment with idiopathic epilepsy.

獣医師・宮澤 裕

ヒトの『猫アレルギー』に新治療法!?

ヒトの皮膚科の資料によると、『猫アレルギー』を持っているヒトは、5人に1人もいるそうです。
ネコさんと暮らしたいのに、断念している方も少なくないようです。

『猫アレルギー』の原因物質は、の一つが『fel d1』というタンパクであることがわかりました。
この『fel d1』はネコさんの唾液に含まれており、毛繕いした際にネコさんの毛に付着します。
そして、抜けた毛やフケと一緒に環境中に舞い、ヒトのアレルギーの原因となります。

実はすでに『fel d1』を無効化する抗体が開発され、海外では製品化されているようです。
しかも、キャットフードとして流通しています!

《製品サイトはこちら》

『猫アレルギー』だけでなく、花粉症など、これまでのアレルギー治療は、アレルギー反応が出てしまう『患者さん側』の免疫をおさえる治療ばかりでした。

今回の発見とそこから派生した治療法は、アレルギー物質を作らせない、ばらまかせないという、原因側へのアプローチである点が画期的です。
このフードで、ネコさんが産生するアレルゲンは平均で47%も減少したそうです。
日本でも、皮膚科の獣医師が『更なる研究が必要』としつつも注目しているようです。

早く日本でも流通するといいですね。
そして、安心してネコさんと暮らせる方が増えるととても嬉しいです。

獣医師 宮澤 裕