Category Archives: 病気のご案内

高脂血症の治療薬がなくなる!?

高脂血症の内服がなくなる!?

ヒトと同様に、ワンちゃん・ネコちゃんにも中性脂肪やコレステロールが上がってしまう【高脂血症】があります。
血液中の脂質が過剰に上がってしまうと様々なトラブルが続発するため、注意が必要です。

特に注意が必要な疾患として、【膵炎】があげられます。
膵炎は『腹痛』『嘔吐』『下痢』が主体であり、死亡率も非常に高い怖い疾患です。

さて、ワンちゃん・ネコちゃんの【高脂血症】でよく使う『リポクリン』という薬剤の製造が終了となりました。
ヒトの【高脂血症】でより良いお薬が開発されたため、リポクリンが中止になったようです。

ワンちゃんはリポクリンの代替薬があるため、ご心配は不要です。

ネコちゃんはリポクリンの代替薬がありません…。
今後は、ダイエット・内服・サプリなどで体質改善をしていくしかありません。

【高脂血症】は【脂質代謝異常症】へと病名も変わりましたが、名前の示す通り『脂質をうまく代謝できない』状況です。
つまり、体質を改善していくしかないということになります。
ヒトと同様に、生活や食事を工夫していく必要があり、そのためには保護者の知識と継続力が必要です。

ヒトとペットの高脂血症の比較

昔は、ワンちゃん・ネコちゃんの【高脂血症】は話題にすらあがりませんでした。
長生きできる子が増えてきたからこその『生活習慣病』です。
使える内服がなくなる今こそ、我が子のために本気を出しましょう!

獣医師 宮澤 裕

《ワンちゃんの心臓病セミナー》

『〇〇ちゃんの心臓の音がおかしいですよ』とお伝えすると、
『でも、うちの子とても元気よ』と驚かれることがとても多いです。

心臓病の症状は以下のようなものが代表的です。
・咳
・腰が抜ける
・疲れやすい

『咳』『腰が抜ける』はわかりやすい症状ですが、
我が子の『疲れやすい』は、意識しなければ『老化』と区別できません。
もしくは、安静時の呼吸数を数えれば、症状が出る前段階を見つけられます。

『元気なんだからいいじゃない!』と思うかもしれません。
しかし、何とかして心臓病を早期発見・早期治療したい理由があります。

犬の心臓病の生存期間

最近の報告で『肺水腫を発症した後の生存期間』が明らかになりました。
これまで経験的に感じていたものが数値となった重要な研究です。
初回の肺水腫を無事に乗り切っても、その後の生存期間は1年が目標となります。
 ※参考文献はこちら(英語)

しかし、『肺水腫』を起こす前に心臓病を見つけ、
進行を遅らせてしまうことで長く元気に生きられます!

犬の心臓病と心臓の大きさ

早期発見の工夫や、心臓病との付き合い方など、
まさに命にかかわる知識を学んで損はありません!
2019年にはワンちゃんの心臓病の国際的なガイドラインが改定されました。
  ※ACVIMガイドライン2019はこちら(英語)

それも踏まえ、心臓病を得意とする獣医師・遠洞がわかりやすく解説します。
シニア世代のワンちゃん、または心臓病の好発犬種の飼い主様はぜひお越しください!
 ※好発犬種:キャバリア、ヨーキー、チワワ、マルチーズ、ダックスフンドなど

ワンちゃんの心臓病セミナーの詳細はこちら

獣医師 宮澤 裕

意外と知らない健康の小ネタ(2)

ノミ・マダニ関連のマメ知識

前回は『一斉風靡したフロントラインが廃れた理由』などをご紹介しました。
 ※詳細は前回の記事をご参照ください
今回は、生活に直結するノミ・マダニ関連の勘違いをご紹介します。

《ノミ・マダニの季節は夏?》

↓のグラフでわかるように、”今”が最もマダニの多い季節なんです。
最も暑い季節は、屋外で生活するマダニもしんどいのかもしれませんね。

しかも将来のある『幼ダニ』のピークです。
この時期にマダニをご自宅に持ち帰らないように注意が必要です!

マダニの生活環

《住宅街にはいない?》

当然、住宅街にもノミ・マダニがいます。
先日、アイビーの目の前の道路にタヌキさんがいました。
近くのゴルフ場で大繁殖しているそうです。
タヌキ、ハクビシンなどの野生動物、または外猫さんがノミ・マダニを運んでいるんです。

アイビー前でみつけたタヌキ

実は日本のマダニ分布を調べた文献もあるんです。
四季があり、地域によって気候が異なる日本は、諸外国に比べてマダニにも多様性があるようです。
その結果、農村を好むマダニだけでなく、市街地を好むマダニもいるそうです。
マダニにも個性があって可愛いような気がしてきます。

※参考文献:Ixodid tick species recovered from domestic dogs in Japan.

今回は、ノミ・マダニのトピックスの2回目でした。
また、誤解の多い内容や、身近な内容をご紹介していきます。
トピックスのご希望があれば、ぜひ教えてください!

獣医師 宮澤 裕

意外と知らない健康のマメ知識《腎臓編》

今回はマメ知識の前段階として、『腎臓病の基本』をご紹介します。
腎臓の健康を知るうえでとても重要な部分です!

腎臓関連のマメ知識

その1《慢性腎臓病は治せない》
慢性経過をたどって徐々に失われていった腎機能は取り戻せません。
徐々に線維化を起こし、カチコチで小さくなっているためです。

その2《腎臓が75%壊れるまで発見不能》
数年前までは、腎機能が25%程度まで低下するまで発見できませんでした。
そこまで腎臓が弱るまで症状が出ないこと、
血液検査でも検出できないことが原因です。
腎臓が弱ってきても頑張って体を守ってくれていたのが、
残り25%になった段階で、一気に腎臓の限界を迎えていたんです。

腎機能検査の検出率

その3《腎臓マーカーで早期発見が可能に》
2016年にSDMAという腎臓マーカーが開発されてから、
腎機能が60%程度に低下した段階で発見できるようになりました。
つまり、『腎臓病の症状が出る前』に早く見つけて、
備えることができるようになりました!
ワンちゃん・ネコちゃんの腎臓病について最も権威のある
IRIS( International Renal Interest Society )でも、
腎臓病の診断ガイドラインに腎臓マーカーが組み込まれています。

腎臓病を早期発見

その4《急性腎障害は治療で腎機能が回復》
徐々に腎臓がカチコチになる【慢性腎臓病】ではなく、
いろいろな原因で『腎臓が障害された』時は【急性腎障害】であり、
適切な治療で障害された腎期能が回復します。
しかし、かならず元通りになるわけではありません。
障害されてからなるべく早く治療を開始することで、
回復率が変わってきます。

今回は『腎臓に関する基礎知識』でした。
この4点で、『あれ?』となる点があるはずです。
この違和感をもとに、次回はちょっと踏み込んだ内容に入っていきましょう!
お楽しみに!

獣医師 宮澤 裕

慢性腎不全のお話と腎臓用フードのご紹介

こんにちは、獣医師の遠洞です。

ワンちゃん・ネコちゃんのご飯は日々進化をしています。
特に最近の療法食に関しては、効果だけでなく趣好性に関してもよく研究されています。
※「病気の治療用」であり、それぞれに注意点もあるため、自己判断で療法食を始めないようにご注意ください!

最近、新たな療法食が販売を開始しました。
早速ご紹介いたします!

『Hills k/d早期アシスト』※ネコちゃん専用

これまでも各メーカーから慢性腎臓病用のご飯が販売されていました。
これらは全て、慢性腎臓病ステージ2以降の子のための療法食です。

『k/d早期アシスト』は、慢性腎臓病ステージ1の子のための初めての特別療法食として開発されました。
リンの含有量が調整されており、良質なタンパク質を含むことで腎臓への負担を軽減します。

ここで「慢性腎臓病のステージってなんだ?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
まず、【慢性腎臓病】は腎臓が壊され、腎機能が低下している状態のことを言います。
残された腎機能の程度により、以下のように4つのステージに分けられています。

実はここ最近までは、ステージ2(残された腎機能は約30%)まで進行しないと血液検査で見つけられることができない病気でした。
しかし、新たに『SDMA』という腎臓病マーカーが開発されたことで、慢性腎臓病をステージ1の段階で発見することができるようになりました。
もちろん当院でも測定することができますので、興味がある方はお声掛けください。
7歳以上のシニアのネコちゃんは特にオススメです。

今は、症状が出てから病気を発見するのではなく、
定期的な健康診断で早期に病気を見つけることができる時代です。
【早期発見・早期治療】は、自分の体調不良を話すことができないワンちゃんネコちゃんには非常に大切です。
ぜひ定期的な健康診断をオススメします!