最近、連載(しているつもり)の【クッシング症候群】って、結局なんなの?
が、今回のテーマです。
先に正解を発表すると④です。
副腎ホルモンが過剰になることが多い『ホルモン(内分泌)系疾患』であり、
副腎自体が腫瘍となっていることもあるので『腫瘍系疾患』でもあり、
脳の一部が黒幕となっていることが多いので、副腎は『遠隔操作』されているだけのこともあります。
前回ご紹介したような『典型的な症状』は、副腎ホルモンが過剰になっているために生じます。
元気に見えて、背景で体を蝕んでいくやっかいな病気です。
《クッシング症候群の典型的な症状》は過去ブログをご覧ください
この過剰なホルモンを合成しにくくするのが『アドレスタン』という内服です。
現在は新型コロナの影響か、流通が非常に少なくなっています。
『ホルモンを合成しにくくする』という、このお薬の特徴に注意が必要です。
あくまでも症状を緩和するお薬であって、原因を解決しているわけではありません。
そして、クッシング症候群の約85%は副腎自体の病気ではなく、脳の一部である下垂体の異常が黒幕です。
この黒幕が副腎を遠隔操作して『副腎ホルモンが過剰』な状況にしているんです。
黒幕がちょっと張り切っているだけであれば、副腎ホルモンを合成しにくくする内服でうまく付き合っていけます。
しかし、黒幕が腫瘍化していたりすると、ホルモンを抑える内服を飲んでもホルモンの上昇が抑えきれません。
その場合は、手術や放射線治療で黒幕を直接たたく必要があります。
さらに厄介なのが、『副腎ホルモン』の中でも、『典型的な症状』とは異なる症状を出す『特殊な副腎ホルモン』を出すタイプや、そもそも『副腎ホルモン』を出していないタイプがあるんです。
もう、本当に大変。
『典型的な症状』ではないタイプは以下のような症状を起こします。
・急に倒れる
・高血圧
・とても心拍数が速い
・たまに鼻出血(鼻血)
・なぜか痩せていく
上記の症状は、いろいろな病気を除外する必要がありますが、【特殊なクッシング症候群】を疑うのは後回しになります。
つまり、とても見つけにくい・・・。
『副腎ホルモン』を出していないタイプに至っては、『健康だけど念のためペットドック』をしなければ見つけられず、症状のないまま致命的なレベルに進行していることが少なくありません。
もう、本当に大変。
結局、ご家族の感じる『うちの子のちょっとした違和感』や『健康なうちにペットドック』が非常に重要になります。
クッシング症候群について書いてあるWEBサイトや飼い主様向け雑誌はたくさんありますが、獣医師目線ではこんな厄介な疾患です。
でも、『予備軍』のうちに早期発見して、タイプを判別して、症状が出るのを待つ!状況に持ち込めれば、かなり有利に闘いを進めることも可能になってきています。
我が子が『シニアなのに元気』と違和感を感じたら、お気軽にご相談ください!
獣医師 宮澤 裕