Monthly Archives: 10月 2020

てんかん発作は○○○で改善!?

ワンちゃんの111頭に1頭が【てんかん発作】をもっていると推定されています。
従来の治療法では、約20~30%のワンちゃんは良好なコントロールができないとされてきました。*1

ちなみに、発作中は、脳内で異常な電気信号が生じています。
発作が5分以上つづいている場合、脳に障害を受けていくため、治療が必要です。
1回の発作がごく短時間であっても、回数が多いとやはり脳に障害を受けます。

ここで重要なのは、国際的なガイドラインで『てんかん発作は発作頻度を半分にすることが目標』とされているということです。
さまざまな医薬品を組み合わせても30%近くのワンちゃんは、発作頻度を半分にできないんです。

近年の報告では、医薬品ではなく療法食を使用する事で、以下のように大きな成果が得られることが証明されました。
従来の医薬品治療と併用することで、さらなる改善が期待されます。

《てんかん用の療法食》*2
・71%の犬の発作頻度が減少
・48%の犬の発作頻度が半分以下に減少
・14%の犬の発作が完全に消失

この療法食は、神経伝達を調整する成分を多く含有するため、脳の過剰な興奮を抑える効果があるそうです。
最近の獣医療の進歩は医薬品だけでなく、食事にも大きな変化をもたらしています。
我が子の食事選び、サプリ選びも自己流ではなく、医学的な根拠があると安心ですね。

ヒトの医療と同様に、獣医師も専門分野・得意分野があります。
『てんかん発作』などの神経科のトラブルでお困りの方は獣医師・五十嵐へご相談ください!

アイビーのスタッフ紹介はこちら

《参考文献》
*1:Therapeutic Serum Drug Concentrations in Epileptic Dogs Treated with Potassium Bromide Alone or in Combination with Other Anticonvulsants: 122 cases (1992-1996).
*2:A randomized trial of medium-chain TAG diet as treatment with idiopathic epilepsy.

獣医師・宮澤 裕

ヒトの『猫アレルギー』に新治療法!?

ヒトの皮膚科の資料によると、『猫アレルギー』を持っているヒトは、5人に1人もいるそうです。
ネコさんと暮らしたいのに、断念している方も少なくないようです。

『猫アレルギー』の原因物質は、の一つが『fel d1』というタンパクであることがわかりました。
この『fel d1』はネコさんの唾液に含まれており、毛繕いした際にネコさんの毛に付着します。
そして、抜けた毛やフケと一緒に環境中に舞い、ヒトのアレルギーの原因となります。

実はすでに『fel d1』を無効化する抗体が開発され、海外では製品化されているようです。
しかも、キャットフードとして流通しています!

《製品サイトはこちら》

『猫アレルギー』だけでなく、花粉症など、これまでのアレルギー治療は、アレルギー反応が出てしまう『患者さん側』の免疫をおさえる治療ばかりでした。

今回の発見とそこから派生した治療法は、アレルギー物質を作らせない、ばらまかせないという、原因側へのアプローチである点が画期的です。
このフードで、ネコさんが産生するアレルゲンは平均で47%も減少したそうです。
日本でも、皮膚科の獣医師が『更なる研究が必要』としつつも注目しているようです。

早く日本でも流通するといいですね。
そして、安心してネコさんと暮らせる方が増えるととても嬉しいです。

獣医師 宮澤 裕

てんかんとは

みなさん、こんにちは。
獣医師の五十嵐です。

今回は神経・整形シリーズの第2回目として、『てんかん』とは何かについて取り上げます。

『てんかん』というのは病気の名前で、何らかの原因で『てんかん発作』を24時間異常の間をあけて、繰り返し起こしてしまうものを指します。
つまり、てんかん発作を起こす場合、病変部位は脳ということです。
この中でも脳に明らかな異常がある場合と無い場合があり、前者を『構造的てんかん』、後者を『特発性てんかん』と呼びます。
一般的には『特発性てんかん』を『てんかん』と呼ぶことが多いです。

『てんかん発作』というのは、脳の神経細胞の異常な興奮によってひき起こされる発作です。
また、『てんかん発作』が全身的に出るのか、体の一部にだけでるのかによって、『全般性発作』と『焦点性発作』に分けられます。

少し頭が混乱してきたでしょうか・・・

特に身体の一部だけに異常をきたす『焦点性発作』の存在を知っていただくと、今まで気づかれなかったてんかんの子をみつけることができるのではないかと思っています。
発作が軽いうちに治療を始めることで、後々大きな発作が起こって命を落とすリスクを下げられる場合もあります。

次回の私の担当の回は、てんかんの診断と治療について触れる予定です。

膵炎の死亡率と新しい療法食

ワンちゃん、ネコちゃんともに【膵炎】はよく出会う病気です。
しかし、あまり認識されていない病気でもあります。
また、ワンちゃんとネコちゃんで症状や背景などに多くの違いがあります。

《ワンちゃん》

嘔吐・下痢・腹痛が主症状であり、2019年の文献では初期死亡率も46.1%と報告されています。
2018年には、世界初となるワンちゃんの膵炎治療用の注射も開発されました。

【高脂血症】が膵炎の誘発因子として重要であるため、【膵炎】の治療および再発防止の観点から『低脂肪食』が非常に重要とされています。
ちなみに、中性脂肪が850以上になると【膵炎】の発症率が約5倍になることが知られています。
今月から流通が始まった《ストマックケア(低脂肪)》は嗜好性が良く、すでに大人気の低脂肪食です。

《ネコちゃん》

ワンちゃんと同様に、嘔吐・下痢が出る子は稀です。
なんとなく食欲がない、食欲にムラがあるなど、わかりにくい症状のみの子が多いです。
腹痛や吐き気があるものの、我慢してしまうようです。

実際に、何も症状のないシニアネコちゃんの18.8%が【膵炎】にかかっていたという報告も出ています。

また、【高脂血症】と関連があると考えられているものの、治療や再発防止の観点での食事管理としては、『消化性の高いフードが良い』『低アレルギー食が良い』と文献によってまちまちであり、統一見解がありません。

《重要な共通事項》

膵臓は食事中の脂肪分を分解できる唯一の内臓です。
そのため、脂質過剰な食事、無分別な食生活は膵臓への悪影響が強いと考えられています。
当然、品質の悪いフード、保管状態の悪いフードは、食事中の脂質が変性しているため、膵臓への負担が増すことが予想されます。
自己判断ではなく、医学的に高品質なフードが推奨されます。

また、【膵炎】が治りにくい子は、背景に黒幕となる疾患が隠れていることが多いです。
特に背景疾患として【腫瘍】が見つかることが非常に多いです。

《まとめ》

ワンちゃん・ネコちゃんともに、普段から高品質なフードを選んであげることが重要なようです。
そして、飼い主様の『なんとなく体調が悪い』と感じる感覚がとても大切です。
気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

獣医師 宮澤 裕

《参考文献(犬)》
Comparison of initial treatment with and without corticosteroids for suspected acute pancreatitis in dogs.